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コラム
口腔機能発達不全症とは?「お口ポカン」「食べるのが遅い」は相談のサインかも
公開日:2026.07.11 / 最終更新日:2026.07.11
監修:神﨑 寛人(日本矯正歯科学会)
口腔機能発達不全症とは、子どもの「食べる・飲み込む・話す・呼吸する」などのお口の機能が、年齢に応じて十分に発達していない状態です。
代表的な症状、検査、治療、保険適用、矯正治療との関係を解説します。
次のようなお子様の様子が気になる保護者の方におすすめの記事です
- 食事中にクチャクチャと音がする
- 食べるのが極端に早い、または遅い
- 食べこぼしや丸のみが多い
- 発音や滑舌が気になる
- 何もしていないときに口が開いている
- 口呼吸や舌の位置が気になる
- 歯並びや矯正治療後の後戻りが心配
口腔機能発達不全症とは?
口腔機能発達不全症とは、成長期のお子様において、「食べる・飲み込む・話す」などのお口の機能が十分に発達していない状態です。
お口は、単に食べ物を入れる場所ではありません。
食べ物をかみ、飲み込み、言葉を発し、唇を閉じ、舌を適切な位置に保つという、生活に欠かせない働きを担っています。
赤ちゃんは、生まれたときから大人と同じ食べ方ができるわけではありません。
授乳、離乳食、幼児食という段階を経ながら、唇や舌、頬、あごを使う方法を少しずつ覚えていきます。
ところが、患者様一人ひとりの成長過程や生活習慣、歯並び、鼻の通り方などによっては、お口の機能が年齢相応に獲得されにくいことがあります。
この状態を歯科医学的に評価し、一定の基準を満たした場合に「口腔機能発達不全症」と診断します。
日本歯科医学会では、口唇閉鎖、舌圧、咀嚼、嚥下などを含め、複数の項目を総合的に評価することが重要とされています。
口腔機能発達不全症が疑われるサインは?
一つの症状だけで診断されるわけではありませんが、食事、発音、呼吸、唇や舌の使い方に気になる点が続く場合は、一度歯科医院へ相談した方がいいでしょう。
代表的なサインには、次のようなものがあります。
食べる機能に関するサイン
- 食べこぼしが多い
- 食事中にクチャクチャと音がする
- よくかまずに丸のみする
- 食べるのが極端に早い、または遅い
- 硬いものを避ける
- 飲み込むときに舌が前へ出る
- 食事中にむせることがある
話す機能に関するサイン
- 発音や滑舌が気になる
- 特定の音を発音しにくそうにしている
- 会話のときに舌が前へ出る
呼吸や安静時にみられるサイン
- テレビを見ているときなどに口が開いている
- 唇を自然に閉じにくい
- 鼻ではなく口で呼吸していることが多い
- 舌が上あごではなく、下の前歯付近にある
日本歯科医師会が2022年に公表した調査では、10代の48.3%が「滑舌の悪さ」「食べこぼし」など、口腔機能に関係する問題を一つ以上経験したと回答しています。
ただし、この数字は口腔機能発達不全症と診断された割合ではありません。
症状があるからといって、直ちに病気と決まるわけではない点には注意が必要です。
口腔機能発達不全症の検査は痛いの?
口腔機能発達不全症の検査は、基本的に痛みを伴わないものが中心です。
まず、歯並び、かみ合わせ、唇や舌の動き、食べ方、飲み込み方などを確認します。そのうえで、患者様の年齢や症状に応じて必要な検査を選択します。
主な評価内容
- 食事や生活習慣についての問診
- 唇を閉じる力の測定
- 舌を上あごへ押しつける力の測定
- かむ機能や飲み込む機能の確認
- 発音、口呼吸、舌の位置の確認
- 歯並びやかみ合わせの診察
すべての患者様に、すべての検査を行うわけではありません。年齢や理解度、現在の症状に合わせて評価します。
どんな治療をするの?
治療の中心は、診断結果に応じた口唇・舌・咀嚼・嚥下などの機能訓練(トレーニング)と、生活習慣の見直しです。
治療内容の一例
- 唇を閉じる練習
- 舌を正しい位置へ置く練習
- 舌や口の周囲の筋肉を動かす訓練
- 年齢に合ったかみ方、飲み込み方の練習
- 鼻呼吸を意識する練習
- 食事姿勢や食べる速度の確認
ただし、口呼吸の原因が鼻炎やアデノイドなどにある場合は、歯科での訓練だけでは対応できません。必要に応じて耳鼻咽喉科や小児科などと連携します。
また、トレーニングは一度行えば終了するものではありません。
ご自宅で継続していただくことが重要です。
保護者の方が一緒に取り組むと、お子様が習慣化しやすくなることがあります。
トレーニングのメリットと限界や注意点
適切な評価に基づいて継続すれば、年齢に応じたお口の使い方を身につける助けになりますが、すべての症状が訓練だけで改善するわけではありません。
期待できるメリット
- ご自身のお口の使い方を把握できる
- 食べ方、舌の位置、唇の閉じ方を練習できる
- 歯並びやかみ合わせに影響する習慣を見直せる
- 矯正治療中や治療後の口腔機能管理に役立つ場合がある
デメリット・注意点
- 毎日の練習が必要になることがある
- 効果や必要な期間には個人差がある
- 年齢や原因によっては訓練だけでは対応できない
- 鼻疾患、発達上の課題、歯並びなどへの別の治療が必要な場合がある
「小顔になる」「ほうれい線が薄くなる」といった美容効果を目的とした治療ではなく、そのような変化を治療効果として保証することもできません。
矯正治療や後戻りと関係性
舌の位置や飲み込み方、口呼吸などは、歯並びや矯正治療後の安定性に関係する場合があります。
歯は、舌が内側から押す力と、唇や頬が外側から押す力のバランスの中に並んでいます。そのため、舌で前歯を押す癖や唇が閉じにくい状態が続けば、歯並びに影響する可能性があります。
ただし、矯正治療後の後戻りには、歯周組織の性質、成長、保定装置の使用状況など複数の要因があります。口腔機能だけが原因とは限りません。矯正治療を受ける患者様については、歯並びとかみ合わせだけでなく、お口の機能も併せて確認することが大切です。
保険適用になるの?
一定の診断基準や施設要件などを満たす場合、口腔機能発達不全症の検査・管理・訓練の一部に健康保険が適用されることがあります。
対象は原則として18歳未満の患者様です。ただし、受診する医療機関、検査内容、診断結果によって保険適用の可否や自己負担額が異なります。受診前に歯科医院へ確認してください。
厚生労働省の診療報酬制度では、口腔機能発達不全症の診断を目的とした舌圧検査や、口腔機能に対する指導・訓練が評価の対象となっています。
歯科医院に相談するタイミングは?
日常生活で気になる状態が続いているとき、または歯並びへの影響が心配なときが相談のタイミングです。
- 口が開いている状態が日常的に続く
- 食べこぼし、丸のみ、むせが多い
- 食事時間が極端に長い、または短い
- 発音や滑舌が年齢に比べて気になる
- 舌で前歯を押す癖がある
- 矯正治療を始める予定がある
- 矯正治療後の歯並びが安定しにくい
- 保護者の方だけでは判断が難しい
こういったことが気になったら一度ご相談ください。
もちろん、症状が一つ当てはまっただけで、過度に心配する必要はありません。
でも、「そのうち自然に治るだろう」と決めつけることもおすすめしません。
まず現在の発達状態を確認し、訓練が必要なのか、経過観察でいいのかを判断することが大切です。
まとめ
口腔機能発達不全症は、子どもの「食べる・飲み込む・話す」などのお口の機能が十分に発達していない状態です。
お口ポカン、口呼吸、食べこぼし、丸のみ、食事速度、発音などは、保護者の方が気づきやすいサインです。ただし、症状だけで自己診断することはできません。
私は矯正歯科医として、歯並びだけを見ればいいとは考えていません。
歯がどこに並んでいるかだけでなく、唇や舌をどのように使っているかまで確認することが大切です。
気になる様子が続く場合は、口腔機能の検査や管理に対応している歯科医院へ相談してください。
早めに状態を確認することで、今すぐ訓練が必要なのか、成長を見ながら経過観察していいのかを整理できます。
監修者

| 院長 | 神崎 寛人 |
|---|---|
| 経歴 | 東京歯科大学卒業 歯科医師国家資格取得
東京歯科大学矯正学講座 日本矯正歯科学会認定医 取得 こうざき歯列矯正クリニック開業 医療法人社団OMS 理事長就任 日本矯正歯科学会臨床指導医(旧専門医) 取得 ポーラスター矯正歯科センター北 名称変更 日本歯科専門医機構認定矯正歯科専門医 |
| 資格 | 歯科医師 |
| 所属歯科学会 | 日本矯正歯科学会 |
